MITスペシャルセミナー
日時:2023年9月8 会場:オンライン

 フォーラムエイトは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の産学連携プログラムにより、2021年から毎年3月と9月に「MIT スペシャルセミナー」を開催しています。6回目となる今回は、交通都市計画学科教授のJinhua Zhao 氏をお招きしました。Zhao 氏は、行動心理学とコンピュテーションを利用した意思決定過程を融合し、世界のモビリティシステムの脱炭素化に取り組んでいます。今回は「Behaviorand Computation: 都市モビリティの未来」と題し、Zhao 氏の研究の根幹をなす「行動(Behavior)」と「計算(Computation)」の関係についてお話しいただきました。

 Zhao 氏はまず、交通輸送分野におけるテクノロジーの進歩を概観しつつ、技術革新と同時にデータや価値観もまた変化しており、それゆえ交通輸送の目的自体も変わっていると指摘。モビリティの未来を考えるうえでは、テクノロジーだけでなく、データや価値観にも注目すべきだといいます。そこで重要となるのが「行動思考(BehavioralThinking)」と「計算思考(Computational Thinking)」のふたつの考え方です。

 行動思考とは、人間がどのように感じ、認識し、行動するのかという観点から考えることです。一例として自動運転車と生体デバイスを組み合わせて行われたシンガポールでの実験が紹介されました。

 一方、計算思考とは、予測・制御などを行うためにデータやアルゴリズムを活用する考え方のことを指します。AIの強化学習などを用いることでその精度はますます高まっているといい、ロンドンにおける人々の移動予測の実験や、シカゴで行われた自動運転バスの実証実験が例として示されました。

 最後に、行動思考と計算思考の統合についての説明がありました。物事を考える際、まずは行動思考によって問題を特定し、適切な課題設定をする。その次に、計算思考によってソリューションを提案する。両者を合わせたこのような思考方法は、研究においてもビジネスにおいても有用なものだとZhao 氏は強調します。

 

(Up&Coming '23 秋の号掲載)
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