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WebLesson:#6

偏心橋脚を持つ連続桁橋
-偏心橋脚の動的応答挙動-


はじめに
 都市部の高架道路では,土地利用の制限から逆L字型橋脚が多く採用され,鉄筋コンクリート製(写真-1)あるいは鋼製(写真-2)のものが用いられる。本橋脚形式の場合,上部構造からの大きな鉛直荷重が柱中心線からずれた位置に作用するため,橋脚基部には偏心曲げが常時作用することになる。このような力学的な非対称構造に加え,橋軸方向に地震が作用すると,橋脚は2方向曲げを同時に受けることになり,さらに,捩れ(ねじれ)振動も発生する(図−1)。従って,地震時には非常に複雑な挙動を呈し,これを精度よく解析する必要がある。
近年では,逆L字型橋脚など,2方向曲げを受ける柱部材の非線形域の挙動を把握することを目的として,実証実験が数多く行われている(たとえば,[1], [2])。加えて,ファイバー要素を利用した非線形解析により,偏心橋脚特有の非線形挙動を合理的に説明できることが確認されつつある[3], [4]。


図−1 逆L字型橋脚に作用する力と断面力分布


写真-1 RC製逆L字型橋脚 写真-2  鋼製逆L字型橋脚


1. 解析概要

・鉄筋コンクリート製の逆L字型の偏心橋脚を有する連続桁橋を対象にして,動的非線形解析(材料非線形,幾何学非線形)を実施し,偏心橋脚特有の地震時の非線形特性を考察する。また,地震動(水平2成分)の加振方法(2成分の単独/同時加振および橋梁に対する加振方向)についても5ケース設定し,応答結果を比較する。

・本構造は,非合成鋼I型連続桁を上部工とし,免震支承をもつ逆L字型の偏心橋脚6基(P1, P2,…P6)にて構成される。解析対象となる鉄筋コンクリート製偏心橋脚をもつ5径間連続桁橋を,図−2に示す。柱の高さは10m,上部構造の中心位置と柱中心線の偏心距離は2.1mである。表−1に設計条件と諸元を一覧にした.


図−2 逆L字型の偏心橋脚を有する連続桁橋


表−1 解析対象の諸元
項目 諸元
重要度の区分 B種
地盤種別 II種
地域区分 A地域(cz=1.0)
橋軸方向 直角方向
保有水平耐力Pu (kN) 4406 3337
khc・W (kN) 2433 2465
等価重量W (kN) 6081 6161
降伏変位δy (mm) 29.5 42.33
終局変位δu (mm) 199.2 338.0
初期モーメント M (kN-m) 0 11944
橋脚基部から慣性力作用位置までの高さ h(m) 10.0 12.2


2. 解析条件と解析モデル

・本解析では,橋脚の非線形特性が重要となる。図−3に,解析で用いた骨組みモデルを示す。これは,1基の橋脚に対して,上部から,梁部(剛域),柱上部(弾性梁要素),柱下部(非線形ファイバー要素),フーチング部(剛域)からなる部材にてモデル化される。塑性化が想定される柱下部には,2軸非線形ファイバー要素を適用する[5]。幾何学的非線形(大変形解析)を考慮することにより,P-Δ効果も取り入れる。

・隣接区間の重量を端部橋脚に付加することで,隣接区間の影響を簡易的にモデル化する。フーチングの底面には基礎ばねを設け,基礎の移動と抵抗を考慮する。

・入力地震動は,兵庫県南部地震(1995)において,神戸海洋気象台で観測された加速度記録を利用する(鉛直動は考慮していない)。

・表−2に示す解析Caseを設定し,非線形動的応答解析を実施した。


図―3 解析骨組みモデル


表−2 解析Case一覧
解析Case 橋軸方向 橋軸直角方向 備考
A A-1 橋軸方向EW、橋軸直角方向NS、同時加振
A-2 橋軸方向EW、橋軸直角方向NS、別々加振
B B-1 A-1と同様
B-2 Case A-1よりN90E回転
B-3 Case A-1よりN180E回転
B-4 Case A-1よりN270E回転

・地震動の入力方法の検討[Case A:図−4]:本Caseでは,橋軸方向と橋軸直角方向に地震動を同時に作用させたCase A-1と,それらを別々に作用させたCaseA-2による挙動を比較する。Case A-2は現行道路橋示方書による動的設計においてよく用いられる入力方法であり,一方,Case A-1はより実際の挙動を反映した作用方法といえる。


図−4 地震動の入力方法(Case A)

・地震動の入力方向の検討[Case B:図−5]:本Caseでは,対象橋梁に対する4つの入力角度を想定して地震動を作用させる。なお,Case B-1(0度)とCase B-3(180度),Case B-2(90度)とCase B-4(270度)は,それぞれ,地震動の正負が入れ替わった関係になるが,本例のような非対称構造の場合,解析結果が異なる。


図−5 地震動の入力方向(Case B)


3. 解析結果
本解析では,免震支承を有する6基の橋脚はほぼ同様の動的挙動を呈しており,P2橋脚に着目して解析結果を示すことにする。

1.橋脚の応答変位の比較[Case A:図−6]
P2橋脚天端の応答変位の様子をオービット(動的軌跡)によって示す。2つの水平成分(橋軸方向EW,橋軸直交方向NS)に対して,単独に作用させたCase A-2に比べ,同時に作用させたCase A-1の方が,最大応答変位が大きくなっている。なお,図−6に示すように,橋軸直交方向(Z方向)はほぼ同一である。


        図−6 P2橋脚天端における応答変位のオービット(軌跡)

2.橋脚基部のコンクリート最大圧縮ひずみの分布の比較[Case A:図−7]
Case A-1は,大きなひずみ(ε'≧ε'cc)が発生した領域がコアコンクリート内部に広がり,一部に,終局ひずみを越える箇所(ε'≧ε'cu)も確認される。一方,CaseA-2は,コアコンクリート内部に,終局ひずみを越える箇所(ε'≧ε'cu)は認められない。


    図−7 P2橋脚基部の最大圧縮ひずみの分布図

※上記1.と2.より,現行設計による解析手法(CaseA-2)は,実際の地震時挙動(CaseA-1)と比べると,応答変位,および損傷を過小評価していることが推察される。なお,道路橋示方書に準拠し,橋脚基部における断面許容曲率と最大応答曲率を比較した結果,いずれのCaseとも,耐震性能2を満足していた。

3. 橋脚の橋軸直角方向の時刻歴応答変位の比較[Case B-1とCase B-3:図−8]
2例とも主要動の作用時に大きな塑性変位が生じる。ただし,橋軸直交方向のうち,偏心荷重側(図中εZの+側))に大きく偏った変形を呈し,残留変形も大きい。これは,最大変位の発生方向と偏心曲げによる変形方向が一致するCase B-3が,最も不利な地震動の入力方向となり,最大応答変位,残留変位とも大きい。


        図−8 P2橋脚の橋軸直角方向の応答変位

4. 橋脚基部断面の最大ひずみ分布の比較[Case B:図−9]
橋梁に対する地震動入力角度の差異により,橋脚基部断面に生じるひずみレベルが大きく異なることがわかる。特に,Case B-3(180度)とCase B-4(270度)では,コアコンクリート内部の損傷が著しく(■ε'≧ε'cu,ε'ce),またその領域は偏心曲げ圧縮側に偏っていることが特徴的である。

   図−9 P2橋脚基部断面の最大ひずみの分布[Case B]

4.考察
・水平2方向に地震動を同時に作用させた場合,それを1方向毎に単独に作用させた場合に比べ,最大応答変位や断面内部の損傷程度(コアコンクリート)は大きくなる(=2軸効果)ことがある。よって,耐震設計に際しては,水平2方向の地震動を同時に作用させることが望ましい。

・1方向のみの地震動入力で解析する場合は,大きめに作成された照査用地震動を用いること,または得られた応答値を割増すことにより,2軸効果を見込むことが可能で,文献[5]に検討例がある。なお,海外には,橋軸方向と橋軸直角方向別々に地震動を作用させて最大応答値または最大断面力を得た後,例えば,橋軸方向の設計においては,橋軸方向の最大断面力に橋軸直角方向の最大断面力の何割かを加算したものを設計断面力とする方法が採られている。

・ 水平2方向同時に地震動を作用させる場合でも,その入力角度により最大応答が大きく異なることがあり,注意が必要である。特に,偏心橋脚を有する場合では,最大応答変位および地震後の残留変形が大きな影響を受ける。よって,地震時の安全性検討においては,様々な入力角度に対し検討することが必要で,‘不利な地震動入力方向’を見落とさないことが肝要である。


参考文献
[1] 早川涼二, 川島一彦, 渡邊学歩:水平2方向地震力を受ける単柱式RC橋脚の耐震性, 土木学会論文集, No.759/I-67, pp.79-98, 2004.4
[2] 永田聖二, 川島一彦, 渡邊学歩:RC逆L字型橋脚の模型実験に対するファイバー要素解析, 第8回地震時保有耐力法に基づく橋梁等構造の耐震設計に関するシンポジウム講演論文集, 2005.2
[3] 土木学会:阪神淡路大震災の被害分析に基づくコンクリート構造物の耐震性能照査方法の検証−解析手法の適用と比較−, コンクリート技術シリーズ49, 土木学会, 2002.12
[4] 萩本英典, 川島一彦, 渡邊学歩, 永田聖二:ファイバー要素解析に基づく2方向地震力を同時に受けるRC単柱式橋脚の耐震性, 第8回地震時保有耐力法に基づく橋梁構造の耐震設計に関するシンポジウム, 2005.2
[5] 青戸拡起,牧原成樹,吉川弘道:水平2方向地震動を受ける鉄筋コンクリート橋脚の塑性変形と損傷に関する検討,第9回地震時保有耐力法に基づく橋梁等構造の耐震設計に関するシンポジウム講演論文集,2006.2
[6] 高梨和光,青戸拡起:3次元動的解析法を用いた耐震性能照査方法に関する考察,第8回地震時保有耐力法に基づく橋梁等構造の耐震設計に関するシンポジウム講演論文集,2005.2


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