はじめに
福田知弘氏による「都市と建築のブログ」の好評連載の第28回。毎回、福田氏がユーモアを交えて紹介する都市や建築。今回は京都の3Dデジタルシティ・モデリングにフォーラムエイトVRサポートグループのスタッフがチャレンジします。どうぞお楽しみください。
Vol.28
京都:おこしやす
大阪大学大学院准教授 福田 知弘
プロフィール
1971年兵庫県加古川市生まれ。大阪大学大学院准教授,博士(工学)。環境設計情報学が専門。国内外のプロジェクトに関わる。CAADRIA(Computer Aided Architectural Design Research In Asia)学会 会長、日本建築学会 近畿支部常議員、NPO 法人もうひとつの旅クラブ副理事長、大阪旅めがねエリアクルー。「光都・こうべ」照明デザイン設計競技最優秀賞受賞。著書「VR プレゼンテーションと新しい街づくり」「はじめての環境デザイン学」など。ふくだぶろーぐは、http://fukudablog.hatenablog.com/
CAADRIA2014 Kyoto
2014年5月、CAADRIA2014が京都工芸繊維大学を舞台に開催された。19回目を迎えるCAADRIA学会、日本での開催は1998年(大阪大学)、2006年(熊本大学)以来、3回目。筆者は、学会長とホストチームの委員を仰せつかっており、長引く経済不況や東日本大震災・福島原発事故等の影響から、スポンサーは集まるのだろうか、海外から研究者たちは例年通り来てくれるのだろうか、と心配したものである。が、終わってみれば、26ケ国から230名以上の研究者、実務者、学生が大集合【図1】。16社のスポンサー企業からご支援頂き、CAADRIA史上、最大規模の会となって幕を閉じることができた。オールナイトで準備にいそしまれた京都工芸繊維大・仲隆介先生はじめ準備委員会の皆様に改めて感謝したい。
【図1】CAADRIA2014 集合写真
5月12・13日は7つのワークショップ。慶応大・池田靖史先生のオーガナイズにより、チューターが具体的内容を企画して3Dプリンターでのデジタル・ファブリケーションや、環境シミュレーションを活用したデザインなどを作り上げた【図2】。
【図2】ワークショップ
5月14・15・16日は最先端の研究発表。著名な3名の基調講演(伊藤穣一・MITメディアラボ所長、ポール・リチェンス・英国バース大学教授、阿部仁史・UCLA教授)、論文発表88編、ポスター発表34編が行われた。ポール教授の基調講演が大江能楽堂の能舞台にスクリーンを設置して行われたこと【図3】、社会人や大学院生に交じって学生服の高校生がポスター発表したこと【図4】、アットホームなカンファレンスディナー、1000ページの論文集の製作、和の国らしく閉会式で一本締め【図5】、と企画満載の手作り運営に想い出は尽きない。
【図3】能舞台での基調講演
【図4】ポスター発表(加古川東高等学校SSH)
【図5】閉会式で一本締め
以下に、学会終了の翌日、5月17日に行われたポストカンファレンスツアーの模様を。これは、学会終了後、開催地の魅力にリラックスして触れてもらいながら参加者の交流を促す、京都体感ツアーである。今回は嵐山方面へ。
嵐山
快晴。京都駅から60名超でバスツアースタート。まずは旧嵯峨御所・大覚寺へ。主要施設の宸殿は、江戸時代、徳川秀忠の娘・東福門院和子の御所を移転したもの。蔀戸の留金には黄金の蝉【図6】。蝉は人の気配を感じると鳴いて逃げるので防犯を願うものだとか、蝉は飛ぶ時におしっこをするので火防のお守りだとか、諸説アリ。蝉の鳴き声が各国でどう違うか、メンバーで盛り上がる。売店では、朱竹印がラインナップ。自分の名字の判子があれば買おうかと、その場にいたメンバーで盛り上がる。外国人の友人も何を盛り上がっているのかと興味津々。姓か名か忘れたが近い発音のものを見つけたので選んであげたよ。
【図6】大覚寺の金色の蝉
野宮神社へ。樹皮がついたままのクヌギの原木で作られた「黒木鳥居」は原始的日本最古の鳥居様式といわれる。黒木鳥居の樹皮をはいだら白木鳥居となるそうだ。深い緑の境内の前を赤い人力車が通り過ぎた。コントラストがいい感じだ【図7】。
【図7】野宮神社「黒木鳥居」
そして嵐山を代表する風景、竹林の道【図8】。まっすぐに伸びた竹林はスッキリとした緑。時折風に揺られてユラユラ、ワサワサ。我々を含めて観光客が列をなしていたが、ちょっと脇で立ち止り、しばらく上を眺めるだけで落ち着いた気持ちにさせてくれた。
【図8】竹林の道
天龍寺。大方丈と曹源池付近は特に人が多かった。縁側に座り曹源池庭園を眺める。この庭園は約700年前に夢窓疎石が作庭した当時の面影をとどめる池泉回遊式庭園である。大堰川を隔てた嵐山や亀山を取り込んだ借景式庭園でもある【図9】。雲龍図は次回にでも。
【図9】天龍寺
渡月橋付近で昼食と集合写真を撮る。気候も良く、気分も良く、桂川に涼を求めるメンバーも【図10】。午後は西陣へ移動。西陣織のファッションショーを見学した後、テーブルセンターを手織りした【図11】。
【図10】桂川入水
【図11】西陣織体験
土木学会親子ツアー
CAADRIAから土木学会へ話題を移そう。2014年、土木学会関西支部が主催した小中高生対象見学会に親子で参加した。これは「ダムと道路を探検しよう!」というテーマで、日吉ダムと京都縦貫自動車道工事現場を見学するもの。毎年大人気の企画であり、幸運にも抽選に当たった。自治体、ゼネコン、鉄道事業者の方々がスタッフに従事されていた。
まずは京都縦貫道の工事現場へ。京都縦貫道は多くの区間で既に開通しているが、京丹波わちIC~丹波IC間は今年度末の完成に向けて工事が進められていた。JR長岡京駅から大型バスに乗り、工事現場の麓で小型バスに乗り換えて、工事中のトンネルを目指す。トンネル入口で、親子共々ヘルメットとマスクを着けてトンネルに入っていく。明かりは工事現場用の仮設照明のみ、雨も降っているので中は暗く、中々スリリングな雰囲気である。100mほど入ったところで工事の概要説明が始まる。
何と、工事中のトンネルの壁にプロジェクターを投影【図12】。山は女性の神様であり、以前は現場に女性が入ることにも、許可が必要だったことなど、勉強させて頂いた。
【図12】京都縦貫道トンネル工事現場
日吉ダムは淀川水系桂川に建設された多目的ダム。先ほど紹介した嵐山の上流部に位置する。2013年9月の台風18号でダムの洪水調節機能が改めて認識された。当時、もし日吉ダムがなく、右岸側で堤防が決壊した場合、約13000戸の浸水、約1.2兆円の被害が発生したと推定される。見学時は平穏な風景であったが、台風18号時は一日でダム湖の水位が23.7mも上がったそうだ(標高178.2mから201.9mへ上昇)。被害を最小限にとどめるため、計画規模を超える流入量の最大9割を洪水時最高水位を超えてダムに貯めて対応したと聞いた。
ダム堤体内部へ。このような見学コースは、地域に開かれたダムとして日本で初めて作られた。幅7m×高さ7mの内部空間はひんやり。このコンクート壁の向こうにダム湖の水が溜まっていることは頭ではわかっていても不思議なものだ。ダムの堤体は軍艦ダムとも呼ばれるそうで中々カッコいい【図13】。土木施設としては珍しく、日本建築学会賞を受賞しているそうである。
【図13】日吉ダム
【参考資料】
1.CAADRIA2015 https://www.caadria.org/conf/caadria2015/
2.土木学会関西支部 http://www.jsce-kansai.net/
3.水資源機構日吉ダム http://www.water.go.jp/kansai/hiyoshi/
3Dデジタルシティ by UC-win/Road
「京都」の3Dデジタルシティ・モデリングにチャレンジ
「スパコンクラウド® CGムービーサービス」では、POV-Rayにより作成した高精細な動画ファイルを提供します。今回の3Dデジタルシティのレンダリングにも使用されており、スパコンの利用により高精細な動画ファイルの提供が可能です。また、POV-Rayを利用しているため、UC-win/Roadで出力後にスクリプトファイルをエディタ等で修正できます。
(Up&Coming '15 新年号掲載)