「忘れたくないあなたの思い出—。記憶喪失映画5選!」

様々な映画やドラマで記憶喪失という設定が多く使用されています。主に恋愛映画に用いられている印象がありますが、記憶喪失はあらゆるジャンルに広く用いられており今日まで普遍的なギミック( 仕掛け) です。今回は記憶喪失映画を題材に、映画と記憶の関係について探ります。

自分、実は最強でした
「ボーン・アイデンティティ」

記憶喪失の男が謎の暗殺者たちと戦いながら自身の正体を探っていく「ボーン」シリーズ第1作目。名前も思い出せない中、皮膚に埋め込まれたマイクロチップを頼りにスイスの銀行を訪れ、個人用の貸金庫には偽造されたパスポートや様々な国の通貨、そして拳銃が置かれていた。

過去は忘れているが、戦闘スキルは何故か忘れていないアクション映画にはもってこいの設定。これ以降、記憶を無くした「(必殺)仕事人」が主人公という設定の映画が増えました。徐々に自身の謎が明らかになっていくミステリー展開やフィリピンの格闘技「フィリピノ・カリ」を使った斬新なアクションも魅力的です。

アメリカ映画 2002年製作 上映時間:119分 配給:UIP
監督:ダグ・リーマン 出演:マット・デイモン、フランカ・ポテンテほか

記憶を無くした者と偽る者の大騒動
「LUCK-KEY ラッキー」

こちらも「仕事人」が記憶を無くす物語なのですが、完全にコメディな内容です。銭湯内で石けんに足を滑らせて転んでしまった仕事人は過去の記憶を無くしてしまう。仕事人の身なりを見ていた一般人の若者は、仕事人の転倒時に自分のロッカーの鍵とすり替え、仕事人と一般人の人生が入れ替わってしまう不思議な物語です。

記憶喪失になった仕事人の新たな転職先。そこで起きる珍騒動に爆笑必至な作品です!ちなみに今作は2012年に公開された日本映画「鍵泥棒のメソッド」を原案にしています。

韓国映画 2016年製作 上映時間:112分 配給:クロックワークス
監督:イ・ゲビョク 出演:ユ・ヘジン、イ・ジュンほか

フィンランドの名匠が描く悲哀と恋愛
「過去のない男」

フィンランドを代表する名匠アキ・カウリスマキ監督の中でも有名な「敗者3部作」の2作目。暴漢に襲われた影響で記憶を無くした中年男性。港町の住民たちと協力しながら、慈善団体で働く女性に恋をする物語です。

アキ・カウリスマキ監督といえば昨年公開された「枯れ葉」が異例の大ヒットを記録していますが、今作と大枠は変わりません。どの作品でも労働者を題材に、悲壮的な展開にも関わらず何故か笑ってしまうシュールな展開。記憶を無くした状態だからこそ主人公の生命力と純粋な恋心に元気を貰えること間違いなしです。

スウェーデン映画 2002年製作
上映時間:97分 配給:ユーロスペース 監督:アキ・カウリスマキ
出演:マルック・ペルトラ、カティ・オウティネンほか

あの監督の大出世作
「メメント」

「ダークナイト」「インターステラー」で有名な監督クリストファー・ノーランの大出世作。10分しか記憶を保てない主人公がポラロイド写真や体にメッセージを刻みながら、自分におきた出来事を探っていく。10分という超短時間で過去と現在を反復ダッシュするスピーディなミステリー映画です。

監督は「テネット」でも時間の逆行について描いており、映画と他の芸術との違いは「時間を操れる点」にあると主張しています。記憶喪失により過去の時間に遡れる合理的な理由を作り、時間を操ることに見事成功したという点では監督の作家性が垣間見える作品です。

アメリカ映画 2000年製作 上映時間:113分
配給:アミューズピクチャーズ 監督:クリストファー・ノーラン
出演:ガイ・ピアース、キャリー=アン・モスほか

大切な人を忘れた二人の物語
「あのこを忘れて」

■ 2023年3月11日(土)公開
『あのこを忘れて』
© Hero No.1 film
映画公式HP:
https://anowasu.com/

ある病気の特効薬。その副作用は特定の人を「忘れる」こと。2組の男女のうち片方が記憶を無くした状態。通常は主人公1人が記憶喪失になる設定が多いため、2人の記憶喪失者が映画でどのように関係していくのか興味深い作品です。また、台本の完成前から俳優たちとワークショップを繰り返し、半年以上の稽古期間を経て作られました。ワークショップでは、「話し合い」を徹底して、能動的に役になりきることで、他の映画とは異なる語り口に仕上がっています。

全国の主要な映画祭で受賞歴のある谷口雄一郎監督の初劇場公開作品です。監督作品の特徴は、序盤に起きる大きなギミック(仕掛け)を軸にキャラクターの心の機微を描くこと。今作も序盤に記憶喪失という大きなギミックがありますが、これを起点にどのようにドラマが走り出していくのでしょうか。

過去の短編映画「ゆびわのひみつ」、「私以外の人」、「しらないで」もユーモラスで映画でしか起こり得ない奇跡に溢れた作品であり、オンラインにて鑑賞可能です!

日本映画 2021年製作 上映時間:57分
配給:Hero.No.1Film、キネマトワーズ 監督:谷口雄一郎
出演:保坂直希、相馬由紀実ほか
2024年4月13日(土)秋田県御成座の大山家上映会にて上映予定!
御成座HP:http://onariza.oodate.or.jp


(Up&Coming '24 春の号掲載)

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